脂肪吸引について
その1.肥満の原因について
肥満は種々の成人病を引き起こす原因として、先進国を中心に健康上の大きな問題です。食生活を中心とした生活習慣の問題ももちろんありますが、ホルモン的な遺伝性も指摘されています。
レプチンと呼ばれる、主に内臓脂肪から分泌される食欲抑制やエネルギー消費のホルモンがあります。これは、視床下部にあるレプチン受容体を介して痩せる採用を起こすものでありますが、肥満者ではこれが鈍いといわれています。レプチン抵抗性の人に対し、より大量のレプチンを投与する事が一つは考えられています。
また、白色脂肪細胞にはベータ3アドレナリン受容体という痩せる受容体も存在しています。やはり、日本人肥満者の三分の一程度にこの遺伝子の異常があるとの報告もあります。
今後、こういった物が全身肥満者の治療の方法として確立して行く可能性があり期待されます。一方で、局所的な肥満や体型補正に対しては、脂肪吸引術は有効な方法の一つでありますが、これは皮下脂肪をとる事によって改善させようというものです。
その2.腹部の脂肪吸引
脂肪吸引手術の場合、もっとも多く一般的なのは腹部脂肪吸引です。今回はなるべくそれについて詳しく述べてみようと思います。
脂肪吸引は皮下脂肪をある程度とってすっきりした体型に補正させようという物です。そういう意味では、局所型肥満タイプの人のほうが手術効果としてはよいことになります。全身的な肥満者はある程度減量しないと効果的とはいえません。なぜなら、例えば腹部では皮下脂肪がとれても、内臓脂肪が多ければ脂肪吸引だけで見違えるように細くなるとはいえないからです。皮膚をつまんだ時に厚くつまめる部分は脂肪が多いということになります。皮膚を大きくつまんで絞った時に、お腹が大分細くなる感じがあれば脂肪吸引によって細くなるという効果が期待できるでしょう。中には、腹筋が弱いためにお腹が出ている人もいますから、そういう人は腹筋を鍛えるほうが効果がある訳です。
手術は、通常数ミリ程度の小切開を加え細い管で脂肪を吸い取ることになります。切開する部分も病院によってまちまちですが、私は臍の中にしています。こうすると傷口が目立ちにくいという利点に加え、腹部の中心部から手術操作をすることになるので、全方向から脂肪を吸引するのが比較的楽だからです。通常臍より下側は80%位の脂肪を吸引しますが上腹部側は60%程度におさえておきます。こうしないと、脂肪吸引した部分が周辺と段差を生じ違和感を生じるからです。
私の所では麻酔は、静脈麻酔と笑気麻酔そして局所麻酔を併用する方法で行っています。この方法の利点は、患者を半覚醒下の状況で手術を行えるので、患者の痛み等の反応に素早く気付くことができて安全だからです。また、自発呼吸のために、麻酔の覚醒が悪いという不安もないのも利点です。一般に腹部では、痛みの敏感な部分とそうでない部分とがあります。臍を中心とした上腹部側の方が、痛覚が敏感なようです。これは、皮下組織の癒着の程度や神経の分布に差があるためだと思います。
術後は一週間の圧迫固定を要しますが、下腹部のむくみを抑える目的でガードル等の着用を進めています。脂肪吸引部の痛みは翌日からほとんど気にならないようですが、圧迫時の痛みやしびれ感等が落着くのに2~3ヶ月を要します。
その3.ダイエットと脂肪吸引術について
現代人にとって肥満の問題は大きなテーマの一つでありましょう。
日本人は欧米人に対し、腸が長いとか、肥満遺伝子を持つ人間が多いなどと云われています。ダイエット法として、主に食事療法が考えられ、全身の脂肪を落とすという意味では重要でありますが、確立された方法があるとは言い難く、忍耐力を要する点と、リバウンドによる副作用の危険性もはらんでいます。運動を取り入れた、総合的な医療的観点からも取り組む必要がありますが、まだ日本では肥満を病気にとらえる意識が低い為に、こういった総合的治療施設は極めて少ない現状です。
また、仮に減量に成功しても、それを維持して行く精神力やたるんだ皮膚の処理が必要になる場合も出て来ます。50代以上になると皮膚の収縮力が落ちてくる為、タルミが出やすいし、また若者でも急激に大量に痩せた場合にはタルミが出る事になります。また、部位的に痩せようとする場合に、目的に応じたエクササイズを取り入れないと難しい事になります。
一方、脂肪吸引術のメリットは、取りたい部分を決めて脂肪を取り除く事ができ、成人では脂肪細胞が増えることがない為、維持が容易である事と短期的に効果が出せる点にあります。また、脂肪吸引に伴って起こる皮膚の収縮作用は、タルミが出にくくなる点でのメリットと云えます。一方で、脂肪吸引はあくまで皮下脂肪を吸引する事による変化です。この為、女性のように皮下脂肪が多い場合に、その変化が顕著に出やすい人がいる一方で、全身的に肥満が極度であると、その変化には自ずと限界があるのも事実です。この為、脂肪吸引術の適応として、二の腕とか、腹部とか大腿などの部分的な肥満を解消する目的であれば満足度も高いものと思われます。
一方、高度に肥満している場合には、生活習慣の是正から始め、ダイエット法である程度満足すべき効果が得られればそれでも良いのですが、どうしても更に痩せたい部分が痩せられない時に脂肪吸引術を併用する事が良いように思われます。脂肪吸引の適応として、自分でも気になる部分をつまんだ時に厚くつまめる人は皮下脂肪が多いという目安になるので参考にすると良いでしょう。
その4.大腿部脂肪吸引について
女性の場合脂肪が多く付いている部分は、腹部、腰部、臀部、大腿部です。
肥満でもリンゴ型肥満と洋ナシ型肥満という言われ方があります。リンゴ型肥満は男性の場合などに多く、腹部がポッコリ出ている場合を指し皮下脂肪より内臓脂肪が多いタイプです。これは成人病のリスクも高くなるので、減量の必要性があるし脂肪吸引の効果があまりないと考えた方が良いでしょう。
一方、洋ナシ型肥満というのは女性に多く、前述のごとき場所に脂肪が多いケースです。文字通り洋ナシのような形をしており、脂肪吸引による体型の補正が一般的に効果をもたらす場合が多いといえます。このうちいちばん脂肪の多く付いているのは大腿部です。通常この部分の脂肪吸引をすると、およそ2~3リットル程度の脂肪が吸引される場合が多いといえます。
脂肪自体は比重が軽いので、体重としては2キロ程度の減量効果が一般的ではないかと思われますが、サイズ的にはだいぶ減少する場合が多いです。範囲が広くなるために、術後の固定などのケアが重要となります。ただし、固定を行っても2、3日は痛みがある程度強いので、安静に出来るような状況の方が望ましいです。
この部分のむくみが引くのに要する時間は、脂肪の量が多いと少し時間が掛かる事になります。私のところでは、術後1週間のテーピングの使用と、サポーターの使用を併用しています。その後もしばらくは、サポーターの使用を行ってもらう方が良いでしょう。
一般に大腿の脂肪吸引の場合には、臀部の脂肪が多い人もよくいるので、その部分まで含めて脂肪吸引した方が良い場合も多いのです。そうでないと大腿部分はおよそスッキリしても、臀部の脂肪が下に落ちるような格好になって、どうしても大腿後面上部がスッキリした感じに乏しくなるからです。
このように手術を行っても、痛み、しびれ感、突っ張り感などはしばらくの間続くので、数ヶ月間は多少気になると考えておいた方が良いでしょう。半年でほぼ完全に落ち着いてスッキリした状況になってくると思います。